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元銀行員がかんぽ生命の保険不正契約問題の原因を考察してみた

最近ゆうちょのかんぽ生命不正契約問題が話題になっていますね。

いまはかんぽ生命にスポットライトが当たっていますが、これは氷山の一角で、他の金融機関でもこれからどんどん不正な契約があったことが明るみになると思います。

ポイントは、言葉巧みに同意書を書かせて便宜上同意の上で契約させているという点です。

一般の方からしたら

「こんな不正まがいなこと良くできるな」とか

「銀行員とか郵便局ってもっと顧客の立場に立った営業をしてくれるところだと思った」

などいろいろ思うところはあると思いますが、

5年間地方の銀行で預かり資産担当といって保険や投資信託を中心に外交営業をしていた自分にとって、銀行員側からの視点を踏まえていうと

正直、このような無理やりな契約に至るのも分からなくはないんですね。

なぜ地域密着型のゆうちょがこのような不正まがいな契約をしてしまうまでに至るのか

その理由について同じ金融業界で保険の営業をしていたからこそわかるその実態について包み隠さず話せたらと思います。

理由①ノルマが膨大にあるから

「ノルマ 英語」の画像検索結果

これはなんとなく一般の方でもわかると思いますが、銀行員はノルマ至上主義です。

ノルマを達成すれば半期のボーナス査定時、上乗せがありますが、ほとんどの銀行員は数字を上げるという達成感やお金欲しさよりもむしろ上司から怒られないようにするために数字を上げていることのほうが多いです。

私の場合は珍しく男性で預かり資産を担当していたのですが、この預かり資産を担当するのは8割以上は女性が多いんですね。

女性は窓口で顧客対応するイメージがあると思いますが、現在窓口のほとんどは入行3年目までの若手行員もしくはパートさんが担当することが多いんです。

 

窓口でも保険や投資信託の販売ノルマはあるのですが、外回りではそのノルマは飛躍的にあがり窓口にいたときの2、3倍以上の保険ノルマを課せられるのは当たり前で従業員が15名程度の小店であればほとんど1人で店に割り振られたノルマを達成しなければばらないような状況にあることも珍しくありませんでした。

 

そしてノルマは達成すれば来期に上乗せされ、また達成すれば来々期さらに上乗せされるため雪ダルマ式にノルマがどんどん増えていってしまいます。

そうなると

頭ではその保険が必要な人に販売することが大正義なのは重々承知しているのですが、それよりも目の前のノルマをいかに達成するかにフォーカスしてしまうため、

「以前契約てもらった鈴木さん、すごい優しいおばあちゃんだったな、次はこの終身保険を勧誘してみようか。」

といった風に以前行った先の契約できそうなところから手当たり次第に営業をかけるという発想に陥てしまうんですね。

そして、皮肉なことにこのノルマは真面目かつ責任感のある人ほど達成しなければならないというプレッシャーに圧し潰されてしまうため、

顧客利益<ノルマ達成

という発想になり数字上は上がっているため上司や支店長からは褒められるので、その営業は間違っていない、数字のためなら仕方ない、と思考停止してしまうんですね。

これが今回の不正契約の一番根本にあるものだと思います。

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理由②優良顧客リストがあるから

保険商品という実体のない小難しい商品を売るために一番効率の良い営業方法は

「以前買って貰った先に営業をかける」

ということです。

どれだけ預金をもっていようが、銀行員に対して良いイメージをもっていようが

金融商品を買ってもらうためにはまずその面倒な説明を少なくとも30分は聞いてもらって、内容を理解してもらう必要があります。

しかし、新規顧客開拓はほとんどテレアポか飛び込みで行くのですがその説明すら聞いてもらえないことも多く、

ほとんどの人が説明を聞いてもらう前に

「間に合ってます」

「保険ならもういらない」

と話さえ聞いてもらえないことがほとんど。

そりゃ今まで少しでも脈があるところにいったほうが契約を取れる可能性が高くなりますよね。

そこで、営業マンが頼るのが優良顧客リストなんです。
優良顧客リストは預金、保険、投資信託、外貨など資産別にした保有額と件数の残高ランキングが銀行のシステムですぐ出せるようになっています。
その顧客リストに挙がっている名前を検索すれば、過去の交渉履歴もすぐ出てくるのでこれを読めばどんな性格で、何に興味があって、どういう風に交渉したかがすぐに分かるようになっています。
だからこそ、銀行員はツボを押さえた勧誘が可能になるのですが悪くいうとどの人なら契約してくれそうか履歴を見るだけですぐに分かってしまうんですよね。
世の中には一定数、頼まれると断れない人がいるのでそういう人に対して積極的な営業する流れができてしまうんですね。

理由③高齢者販売マニュアルの形骸化

「manual」の画像検索結果
以前から高齢者への金融商品販売については問題視されており、金融商品取引法という金融商品を販売にあたって販売者が消費者に金融商品を販売する際に守らなければない法律があります。

 

特に金融商品取引法では適合性の原則というものがあります。

この適合性の原則とは「投資家の『知識』、『経験』、『財産の状況』、『契約を締結する目的(投資目的)』に照らして、不適当な勧誘を行って、投資家の保護に欠けることになるようなことをしてはならない」というものです。

そのため、私が以前勤めていた銀行では、

  1. 意向確認(こういうニーズがありますよ)を行うため意向確認書に同意の署名をしてもらう
  2. 上司と一緒に訪問して顧客が金融商品の内容をしっかり理解しているのか
  3. 高齢者の親族(こどもが相応しい)に同席してもらって説明する

以上の3段階構成で強引な販売ができないようなスキームがしっかり作られていました。

金融機関はお金を扱う上で今回の報道のようなことが起きると信頼回復するまでかなり時間がかかりますし、あらぬ疑いまでかけられその対応に追われ負の連鎖に陥ってしまうのです。
しかし、今回のゆうちょではそのマニュアルがおそらくあったけども形骸化していたか、営業マンが独断でやっていたかのどちらかですね。
管理体制がしっかりしていればこんなことにはならなかったはずなのでそこが今回の悲劇を生んだ一番の要因かと思います。
↓偽造は論外

まとめ

以上が元銀行員からみた今回のゆうちょ不正契約問題です。
たぶん他の金融機関の担当者も内心ビクビクしてると思います。
今回のケースは流石に酷すぎるにしてもちょっと強引だったかなという契約は大なり小なりノルマ至上主義の銀行員なら誰しも経験しているはずです。
そしてこの記事を見た方々。他人事とは思わないでください。
田舎に高齢の親を残しているという人は本当に気をつけて親のことを監視してあげてください。
特に退職したあとは退職金が何千万単位で口座に入ってくるのでそのタイミングを見計らって必ず販売手数料が高い金融商品(=リスクの高い金融商品)から営業をかけてくるのは間違いありません。
そして、うちの親は大丈夫と思うかもしれませんが、
その辺のどこの輩か分からない営業マンではなく、銀行員などの金融マンはどこに勤めていたか(給与振込先でわかる)、何にお金を使っているか(クレカの支払先でわかる)、どんな性格なのか(過去の交渉履歴)を事前に把握しています。
この3つを把握すれば、お客さんが共感するポイントをピンポイントでつけることができるし、単純接触効果で回数を増やして会えば最初は絶対入らないと決めていた保険でも、
親近感が湧いてきたり、こんなに来てくれているから申し訳ないという罪悪感で契約してしまってもおかしくないんです。

 

もちろん全員がそのような金融マンではありませんが、契約してしまったあとでは後のまつり(保険の場合は一応クーリングオフ制度は使えます)ですので、十分その点には注意してあげてくださいね。